「AIを入れれば業務が楽になるはず」と思って導入したものの、期待した効果が出ない。こうした声は、中小企業の現場で珍しくありません。
原因の多くは、「AIを入れる前の業務整理」が不十分だったことにあります。わたしは経営管理の仕事を15年続けてきましたが、ツール導入で失敗するケースの大半は、土台がないまま始めてしまったことが原因でした。
この記事は、AI導入について情報収集中の方向けです。具体的な生成AIガイドラインの作り方やツール比較は【情シスなし中小企業の生成AIガイドライン作成法】でまとめていますので、業務整理ができた方はあわせてご覧ください。
この記事のポイント
- AI導入前に業務棚卸しが必要な理由を解説
- 管理職が1〜2週間で完了できる具体的な進め方を紹介
- 工数削減の簡易シミュレーション例を提示
- 明日から自分のチームで始められるアクションを案内
それでは早速見ていきましょう。
なぜAI導入前に業務棚卸しが必要なのか
AIツールを導入しても効果が出ない企業には共通点があります。それは、「どの業務にどれだけ時間がかかっているか」を把握していないことです。
ツール導入が失敗する根本原因
新しいツールを入れれば仕事が楽になる。そう期待して導入しても、何を効率化すべきかが曖昧なままだと、ツールが使われずに終わります。
経営管理の現場で見てきた失敗の多くは、「導入すること」がゴールになってしまい、「何を解決するか」が置き去りにされていました。
業務の「見える化」が先にないと効果測定ができない
AI導入後に「効果があったか」を判断するには、導入前の状態を数字で把握しておく必要があります。Before/Afterの比較ができなければ、投資判断も継続判断もできません。
業務棚卸しは、そのための「現在地の記録」です。
業務棚卸しの具体的な進め方
業務棚卸しは大がかりなプロジェクトにする必要はありません。管理職が1〜2週間で完了できる手順を紹介します。
ステップ1|主要業務を30個以内でリスト化する
まず、自分のチームが担当している業務を30個以内でリストにします。細かく分けすぎると収拾がつかなくなるため、「大まかなくくり」で十分です。
たとえば、「見積書作成」「請求書処理」「顧客問い合わせ対応」「月次レポート作成」といった単位です。
ステップ2|各業務の工数と属人度を記録する
リスト化した業務ごとに、週あたりの工数(時間)と属人度(その業務ができる人が何人いるか)を記録します。
属人度が高く、工数も多い業務は、AI化やマニュアル化の優先候補になります。
ステップ3|「AI化候補」に優先順位をつける
工数と属人度の記録をもとに、AI化候補を3〜5個に絞ります。すべてをAI化しようとすると導入が複雑になるため、まずは「効果が見えやすい1つ」に集中するのが現実的です。
| チェック項目 | 完了 |
|---|---|
| 主要業務を30個以内でリスト化した | □ |
| 各業務の週あたり工数を記録した | □ |
| 各業務の属人度(対応できる人数)を記録した | □ |
| AI化候補を3〜5個に絞った | □ |
| 削減効果のざっくり試算を行った | □ |
| 経営層への説明資料を用意した | □ |
棚卸し後のざっくり試算で経営判断を支援
業務棚卸しが終わったら、削減効果のざっくり試算を行います。経営層への説明資料として活用できます。
工数削減の簡易シミュレーション例
たとえば、見積書作成に週5時間かかっているとします。AIツールで50%削減できれば、週2.5時間の削減です。年間では約130時間、時給2,000円換算で26万円相当の人件費削減になります。
この試算は精密である必要はありません。「オーダー感」が伝われば、経営層の判断材料になります。
数字で語れると経営層への説明がスムーズになる
「なんとなく便利そう」ではなく、「週5時間が2.5時間になり、年間26万円相当の削減」と言えるだけで、経営層の反応は変わります。
2人の子どもの父として感じるのは、家庭でも仕事でも「具体的な数字」があると話が進みやすいということです。
個人としての管理職が明日からできること
業務棚卸しは、会社全体で取り組む必要はありません。まずは個人として、自分のチームから始められます。
まずは自分のチームで1週間だけ記録する
明日から1週間、チームメンバーに「どの業務に何分かかったか」を簡単に記録してもらいます。Excelでも手書きでも構いません。
この1週間の記録があるだけで、次のステップに進みやすくなります。
結果を持って経営層に相談する
記録をもとに、「この業務をAI化すれば、これだけ削減できそうです」と経営層に相談します。数字があると、話が具体的になり、予算や人員の確保につながりやすくなります。
業務整理ができたら、次は生成AIガイドラインの策定へ。具体的な手順は【情シスなし中小企業の生成AIガイドライン作成法】の記事をご覧ください。
まとめ
AI導入前に必要な業務棚卸しの進め方を整理しました。ここまでの内容を振り返り、次の一歩を確認しましょう。
- AIツールを導入しても効果が出ない原因は業務の「見える化」不足
- 業務棚卸しは管理職が1〜2週間で完了できる
- 3ステップ:主要業務リスト化 → 工数・属人度記録 → AI化候補の優先順位づけ
- 削減効果のざっくり試算ができると経営層への説明がスムーズ
- 精密な数字でなくても「オーダー感」が伝われば判断材料になる
- まずは自分のチームで1週間だけ記録してみる
- 結果を持って経営層に相談し、予算・人員確保につなげる
- 業務整理ができたら生成AIガイドライン策定へ進む
明日から自分のチームで1週間の記録を始めてみてください。その記録が、AI導入の第一歩になります。
業務整理ができたら、次は生成AIガイドラインの策定へ。具体的な手順は【情シスなし中小企業の生成AIガイドライン作成法】の記事をご覧ください。

